目に見えないものについて考える

人間が直接的に観察できるのは計測装置の限界に規定される。直接観察あるいは観測できないものは頭の中で想像して考えるしかない。理論的なものではなく、現実のものを相手にする研究ではそうした状況が日常的に起こるものだが、初心者には現実的なイメージを思い浮かべることができず、いろいろイメージを浮かべてみるものの物体のサイズのオーダーがトンチンカンだったりする。

目に見えないものを考えるときにはいかに現実に近いイメージを描けるかが決定的なポイントになると思うのだが、その「現実に近いイメージ」を学ぶ方法が皆無だったりする。だれかが説明しようと思えばある程度可能になるのだろうが、教科書や大学の授業で「対象について適切に考えるためのイメージ」について説かれているものを見た記憶はない。

結局今のところは実験や論文などを通して少しずつ現実離れしていないイメージを形成していくしかないのだろうけれど、おそらくそういうものを言葉や図で伝えることは可能であって、単になされていないだけだと思う。これは「教育で何を伝えるか」という問題であって、教育でもまだまだ改善の余地があるということだ。

うがった見方をすれば、プロの研究者が学生と自分の差を保持するために「本当に大事なことは教えていない」のかもしれない。