Angels and Demons

物理学研究の一大拠点であるCERNで、とある科学者が殺害された。その遺体の胸にはIlluminatiという文字の刻印が焼き付けられていた。イルミナティとは科学が宗教によって弾圧されていた時代に創設された組織で、宗教による監視の目をかいくぐって科学の啓蒙活動しようという人々の集まりであった。殺害された科学者は、科学者であると同時に敬虔なキリスト教徒で、彼の研究は物理学によって神の存在を証明しようというものだった。キリスト教徒によって科学が利用されるのに我慢がならなかったイルミナティの人間によって彼は殺害されたのか? しかし、その組織は現在は存在しないはず・・・というところから話ははじまる。

Angels and Demons

Angels and Demons

主人公のロバート・ラングトンは宗教がらみの記号を研究するハーバード大学の教授で、イルミナティとその組織が使う記号に詳しかろうということでCERNのトップの人に犯人捜しにかり出される。それが、キリスト教の中心地であるバチカンを巻き込んだ大事件に発展する。


バチカン&ローマとCERNという、名前は知っていてもその詳しい実態についてはほとんど何も知らない場所が舞台となっていたので、ローマ観光をしつつ謎解きを楽しみ、なおかつ知識もつくという、「おもしろくてためになる」小説だった。ただし、ダ・ヴィンチ・コードと同じく、どこまでが事実でどこからがフィクションなのかがわからないので、そこは注意せなあかんところ。

ダ・ヴィンチ・コードに続けて読んだせいか、この二つのストーリーの類似点が気になった。「コイツはダ・ヴィンチ・コードにおけるアイツの役だな」というのが、多くの主要人物について思い当たってしまう。舞台がフランス・イギリスからローマ・バチカンに移ったけれど、プロットの骨格はほぼ同じなんだなと気づく。
表面的には違う話でもその背後にあるパターンは実は同じ、というのはあって当然で、同じパターンに異なる素材を詰め込むことで新しい作品を作るというスタイルを否定はしない。だけどパターンに気づいた瞬間に、それまでどっぷり浸っていた世界が人の手によって作られた虚構であることを意識せざるを得なくなり、楽しめる度合いが弱まってしまう。

そんなことを気にするのは僕がふだん小説を読まないからで、ひょっとして小説をばりばり読む人は、そういうパターンに気づきつつ物語を楽しんでいるものなんだろうか。