Buyology

Buyology: Truth and Lies About Why We Buy

Buyology: Truth and Lies About Why We Buy

製品が売れそうかどうかを見極めるためにターゲット層の人を集めて話を聞いたりアンケートをとったりしても、自分をよく見せたいとかあまり厳しいことはいいづらいといった心理が働き、人は実際にとるであろう行動とは異なる回答をする。たとえば新しいドキュメンタリー番組のパイロット版を見せてから「この番組を見たいと思うか?」という質問をされたら、いつもはバラエティ番組ばかり見ている人でも多少は関心のあるフリをしてしまう、といったことだ。そんな頼りない手法に頼らざるを得ないのが現状で、この本によればマーケティングの世界はなんだかんだ言っても少なからず運まかせなところがあるとのこと。しかーし、そんな時代も終わり、新しいマーケティングの時代がこれからはじまりそうなところなのだよ、ということを著者自身の取り組みを交えつつ説いている。

この本の著者はマーケティングの世界に身を置いていて、

  • タバコの警告表示は実際にはタバコを吸いたい気分にさせているんじゃないか
  • ブランドと宗教には共通点があるんじゃないか

といった疑問を抱いていた。そして脳の活動を直接観察できるfMRIなどの機器が発達したことでそうした疑問を解明できるんじゃないかと、企業スポンサーを募り学者に協力を求めて大規模な実験を実施した。その実験も含め、脳の活動を計測する手法で実施されたさまざまな実験の結果をベースにして、広告で使われるさまざまな手法がどのような理由で効果を発揮しているのか、あるいはなぜ効果が望めないのかといったことがこの本では語られている。
脳の活性化する領域の類似性からブランドと宗教の関係を語ったり、迷信と購買行動の関係、場のにおいや音楽が商品の印象に違いを生むことなど、ものを買うという活動を切り口としながらも「人間ってどんな生き物なのよ」というのがメインテーマじゃないのかと思った。マーケティングも突き詰めると人間を知ることなんだろうかね。

著者のMartin Lindstromさんのウェブサイトには本の紹介ビデオもあるので、図版がまったくない書籍の補助によろしいかも。
http://www.martinlindstrom.com/


人の脳の活動を計測する研究をするには倫理委員会みたいなものの承認を得ないとだめらしい。イギリスの話だけど。