INSTANT WORD POWER

ヴィトゲンシュタインさんも「私の言葉の境界が、私の世界の境界を意味する」とおっしゃっているように、100%ではないにしても、人の思考力はその人の言語能力に強く依存している。自分の中に表現したいことがモヤモヤと湧き出ていても、そのモヤモヤにくっきりとした輪郭を与え他の人に正確に伝えるには、それにピッタリとくる言葉を与えるしかない。それに失敗しても、ジェスチャーや図を利用してなんとか思いを伝達できるかもしれないが、言葉で済ませられるならそれが一番手っ取り早い。

そんなわけで、

  • 語彙が多ければ多いほど人の思考力、理解力、表現力は強化される
  • 思考力、理解力、表現力が高ければ良い仕事、良い地位にありつくことができ、ハッピーな人生を送れる

かどうかは定かではないが、そんな調子で人を煽ってボキャブラリー増強の道へといざなおうとするのがこの本:

Instant Word Power (Signet)

Instant Word Power (Signet)

ボキャブラリーと言っても英語のボキャブラリーである。
受験でおなじみの英単語帳のようなものかと思いきや、おもむきはだいぶ異なる。

  • 特徴1:接頭辞や接尾辞を足がかりにして関連する単語を覚えていく
  • 特徴2:同じ単語を何度も思い出させるアウトプット主体の構成

一つ目の特徴の例を挙げると、本書ではじめに出てくるのは「足」を表すped-だ。これからpedestrian, pedal, biped, quadruped, pedestalなどの足がらみの単語を覚えていく。具体的には、文章の中に空白があり、そこに当てはまる単語を答えていく穴埋め式の問いであったり、接頭辞の由来となったギリシャ語やラテン語を挙げてそれに対応する英語を答えさせるといった作りで、クイズ感覚で読み進めていくことができる。
そして特徴2についてだが、この本では読み進めていくうちに同じ単語を答えさせる問いがくどいほど出てくる。ほんとうに、くどい。

  • bi-を英語で言うと何?
  • ped-を英語で言うと何?
  • あなたには足が二本あります。つまりあなたは○○です。・・・○○に入る言葉は何?

こんな問題が、一度きりではなく間を空けて繰り返し登場する。一つの章だけではなく後のほうの章にもたまに混じっている。そこで誰もが思う、「またかよっ!」「しつこいっ!」と。でもそれがこの本のポイントなのだ。この本に出会うまで意味を知らなかった言葉が、この本を読み進める間に「またかよ」と思える言葉に変わっているのだ。
うんざりしつつも感心する、そんな本でした。


単語単位ではなく接頭辞などの部品レベルでの意味を中心に記憶するので、今後出くわすことになる未知の単語の意味を推測するのにも役立つ可能性が高まった気がしたりして、なかなかお得感があります。