ゲーテとの対話

ゲーテとの対話 上 (岩波文庫 赤 409-1)

ゲーテとの対話 上 (岩波文庫 赤 409-1)

エッカーマンという人がゲーテとの交遊を記録したもので,ゲーテという巨人のものの考え方を知ることができて,なんとなく手に取ったものなんだけれども読んでいくうちに「こりゃいいもん買ったわ」と何度も思った本。

  • 詩を作るには対象をよく研究しなければならない
  • 若いときは大きいテーマで書こうとするな
  • なるべく具体的に

といった詩作の助言が随所に書かれているのだが,詩作に限らず精神的な活動で生産的でありたい人や効果的に物事に取り組みたい人にとっても参考になると思う。

詩なんてものは,大げさな表現,華やかな表現,回りくどい表現を駆使して書かれたよくわからんものという印象があったが,ゲーテの語る詩作の取り組み方は文学というより科学だ。ゲーテにとって詩作とは観察したものを言葉を使って適切かつ効果的に表現する行為である。そして,対象をよく知らずに頭の中だけで考えてひねり出したリアリティに欠ける表現に対して彼は批判的だ。まあ,ニュートン学派の光学理論に対しても批判的だったりするんだけど。

「おおっ」ってものから「なんだかなぁ」なものまでいろいろだが,歴史上の有名人がモノゴトをどんなふうに見ていたのかがこれだけ書かれた本はほとんどないという点で,とても貴重な本だと思う。