99.9%は仮説

99・9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方 (光文社新書)

99・9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方 (光文社新書)

最近はテレビでコメンテーターみたいなことまでやっている人の、健康的な科学論。

科学とは真理を探究する営みである

というのがタテマエというか良い子向けの説明だが、

ただし、人間に獲得できるものはせいぜいが仮説であって真理に到達することは永久にない

ということまで正直に語ってくれる人はほとんどいない。この本ではこの但書きのほうを主題としている。


自分が「科学的」知識を生産する側に身を置くと但書きの重みを痛感する。ついでに、「科学的である」=「間違っているわけがない」と信じ込んでいると思しき人をみると、この人は科学の教育を受けちゃいないんだな、と分かるようになる。

逆に、「科学的」=「正しい」という思い込みを利用して、科学的であるかのような演出をして自分の主張をもっともらしく見せかける人も現れる。ホニャララ大事典のように。


たぶん職業科学者がこの本のようなことを進んで語ることはあまりないと思うが、僕はむしろ科学の根っ子にあるあやふやさに気が付いてからの方が面白いと思えるようになったもんだ。「ああ、科学も人間の営みなんだ」と。


ただし、「人間が真理に達することは100%ない」というのも所詮は仮説であって、いつの日か人類が真理に達するかもしれないので、本書のタイトルは「99.9%は仮説」となっている、・・・というのもまた一つの仮説。